人間国宝 稲垣稔次郎【御室の塔】寄増のお知らせ | 世界遺産 真言宗御室派総本山 仁和寺
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22/03/20

人間国宝 稲垣稔次郎【御室の塔】寄増のお知らせ

人間国宝 稲垣稔次郎氏【御室の塔】寄贈 人間国宝 稲垣稔次郎氏【御室の塔】寄贈 人間国宝 稲垣稔次郎氏【御室の塔】寄贈

🌸人間国宝 稲垣稔次郎遺作「御室の塔」寄贈について
「御室の塔」は、花見の景色の中、婚約中の若い男女が未来へ向かって歩んでいく姿を表現した、人間国宝 稲垣稔次郎氏による昭和36 年の型絵染の作品です。昭和○年、西宮市甲陽園の料亭「播半」に昭和天皇がお泊まりになられた折、同氏がデザインした寝具を陛下がお気に召し、宮内庁を通じて衣装制作のご依頼があったといいます。当時稔次郎氏は体調不良であったことから、ご依頼はお断りしたものの、最後の力を振り絞って自身の思いの詰まった作品「御室の塔」を制作しました。
作家活動の中心となった時代に、時代の象徴であった昭和天皇とのご縁があったこと、また作品のモチーフが、天皇家と繋がりの深い仁和寺であったことから、このたび稲垣氏の孫である稲垣匠氏が、同氏の最後の作品である「御室の塔」を仁和寺に奉納くださることとなりました。

🌸【御室の塔】寄贈に至る経緯
近年、総本山 仁和寺では、文化財保護や技術の継承、および藝術振興を目的として、所有する文化財、建築物などの新たな活用方法や付加価値を生み出すべく、展覧会やイベントなどに力を入れてまいりました。また、所有する文化財を、最先端のデジタル技術によって高精細データにすることで、先人たちから受け継いだ文化を後世に伝えていく取り組みも積極的に行っております。
そうした取り組みの一環として、令和3 年1 月、所蔵する戊辰戦争絵巻を高精細化し、そのデータを講談とともに伝えることで地域の魅力を発信するイベント【仁和寺歴史体感プログラム「絵巻に残された歴史を知る鳥羽伏見の戦いと錦の御旗」】を行いました。そのイベントをご覧になった稲垣匠氏がデジタルデータの精細さに驚きを抱くとともに、情景を残し伝えていくことの意義を感じられたこと、また、“お寺と最先端のデジタルの連動”という点で、以前より意識していた仁和寺の取り組みに改めて強い関心を持たれたことが寄贈のきっかけとなりました。

🌸仁和寺の芸術に対する取り組みと背景
仁和寺は、888 ( 仁和 4 年) 年の創建以来現在まで、建造物の焼失や移転など幾度もの困難がありましたが、その都度時代の変化に対応しながら寺院活動を行ってまいりました。
約1200年の間に失われたものも多数ありますが、現在国宝 12 件、重要文化財47 件、その他約2万件に及ぶ文化財 ( 宝物、什物、聖教など ) を所有しています。
1994年には世界遺産に登録されたこともあり、国内に留まらず、多くの訪日人に向けて日本の宗教や伝統文化、芸術などを伝える機会が増えております。そういった中で宗教活動と共に、文化財の保存と公開の取り組みを積極的に行っております。
近年では、取り組みの一環として、国宝「三十帖冊子」、重文「万葉集注釈」の保存修理、礼拝施設の修復としては重文「観音堂」( 半解体)、国宝「金堂」 ( 蔀戸 )、公開事業としては東京国立博物館に於いて「仁和寺と御室派のみほとけ展」、金堂内で「五大明王展」、霊宝館に於いて「名宝展」を開催しております。
当寺が長い歴史の中で、文芸、絵画、建築等、芸術や文化を育み、発信し、花ひらく場として人々に感動を与える役割を担ってきた背景には、多くの僧侶をはじめ、それぞれに携わった技術を持つ人達の尊い気持ちがあったように思います。
そこで、仁和寺では文化財を保護し、次世代に繋ぐこと、さらには現代の芸術を後世に残していくことが必要であると考え、延いてはそれが、広い意味での文化財保護活動の一助となるという考えから、長期的に現代の作品を残す取り組みを行うことといたしました。
このたびご寄贈いただいた【御室の塔】も、後世に残すべき大切な文化として、守り伝えていくことができればと考えております。

🌸【御室の塔】寄贈後の活用について
御室デジタルミュージアム オンライン」にて、一般公開する予定です。

 

「御室の塔」寄贈に関するお問い合わせ
総本山 仁和寺 財務部 管財課 金崎 電話:075-461-1155