目をさます
3月の声を聴くと~少し暖かい暮らしやすい季節になり~この季節は「春眠暁を覚えず」と昔から言われるように、朝起きる前のうつらうつらとした心地よい状態が何ともいえない頃です。「朝起きて 昼寝の好きな宵寝坊 その間には居眠りをする」という詩があります。
これが私たちの一日の過ごし方だけでなく、一生の過ごし方にならなければいいんですが・・・。
いつもうつらうつらと、自分の生き方がはっきりしないようでは困ります。
お経文に「人間として生まれてくることは大変難しいことだが、今すでに人間として生まれて来ることができた。み仏の教えを聞くというご縁もなかなかないものですが、今すでにこのように聞いている。それならば今あるこの身をまともなものにしなかったら、一体いつの世にするのか」とありました。
私たちは他の動物ではなく、人間として生まれてきたということは、考えてみれば大変なことです。しかも素晴らしい生き方を説く仏の教えにも出会えたのです。
この世において、そのご縁を生かさなかったら、一体いつ私たちは幸福になれるでしょうか~いいかげんに目をさませと、お経文は私たちに語りかけます。
よく「目から鱗がおちる」と言いますが、私たちは今まで何枚の鱗を落としたのでしょうか。いっぱい~イッパイ落として、心の目をしっかりさませたいものです。そのためにもそれぞれにご縁のある場所で、み仏の教えを是非お聴き下さい。
ほら、ウグイスも鳴いているではありませんか~「ホーホケキョ」~「法を聞け」~教えを聴けと鳥のさえずりあらばこそウロコ落としてしかと気がつきました。
ある新聞に~遠い大学に子供を送り出す42歳の母親の心境が投書されていました。
『息子が家を出た(中略)ジーンズにスポーツバッグをぶら下げた息子の後ろ姿が目の奥にしみた。たまたま来合わせていた老婆が (巣立っていくんだねぇ~もう一緒に暮らすことはないかもしれないねぇ)~と目頭を押さえた。
泣くなよ、おばあちゃん。大食らいのあの子が出ていったら、食事の支度が楽になる。お弁当を作るのも一つ減る。お風呂の好きのあの子が、毎日ふんだんに、長い時間シャワーのお湯を流すのにイライラしなくてすむ。
でも、18年間、父として母として、人生の先輩として私たちはあの子に何を伝えただろうか~言っておかなくてはならなかったことがまだ一杯あったような気がする。ほんの少しの沈黙の後、老婆が言った・・・(大丈夫だよ、みんなこうして巣立って行くんだからね)~そうよ、年齢や季節や形が違っても、子供達はいつか親から巣立って行くんだよね』・・・
あなたは如何ですか~父として母として人生の先輩として、子や孫やあるいはその他の方々に何をお伝えになられたでしょうか。
まだの方は何を伝えたらいいと思われますか。いいかえれば、私達はこの世に何を残していったらいいのでしょうか。
財産だけでいいのでしょうか~もっと別のものがあるのではないか。このことをおしすすめていけば、人間は何のために生まれて来たのだろうか、どういう生き方をすればよいのかという問題につきあたる。
「ホーホケキョ」~「法を聞け」と~お彼岸に考えてみましょう。
金子みすずさんは
それはきれいな薔薇いろで 芥子つぶよりか ちいさくて
こぼれて土に落ちたとき ぱっと花火がはじけるように
おおきな花がひらくのよ
もしも泪がこぼれるように こんな笑いがこぼれたら
どんなに、どんなに、きれいでしょう
今日も良い一日でありますように~お祈りしています。