空海の愛する弟子との別れ  | 世界遺産 真言宗御室派総本山 仁和寺
今月の法話
今月の法話
26/10/01

 空海の愛する弟子との別れ 

仁和寺御影堂

仁和寺境内も秋の装いを迎え~参道の樹木の葉も少し季節の色を見せてくれています。

早朝には金堂のご本尊阿弥陀さまへのご法楽は日々の勤め~毎月18日は観音さまの縁日~21日は祖師空海さまの縁日~28日はお不動さま縁日を勤めご法楽をお捧げする日々でございます。

仁和寺が開創(888)され本年で1137年になり、1000年以上の歴史を伝え伝承された古刹であります。宇多法皇が出家をされ僧名を空理とし、空海の弟子となり仁和寺門跡(住職)として仏道を歩まれました。

空海さまが高野山に入定されて後、86年目の出来事のお話しです。

空海さま入定後86年目の延喜21年(921)10月21日、宇多法皇の皇子、醍醐天皇さまの夢枕に、一人の修行僧がお立ちになり、和歌を一首「高野山(たかのやま) むすぶ庵に袖朽(そでくちて)ちて 苔の下にぞ 有明(ありあけ)の月」と二度くり返しおよみになられました。高野山に入定されている空海さまは、今も衣の袖が朽ち果てるほど衆生救済に生きておられる、そのお姿はあたかも有明の月の如く世間の闇を隅々まで照らしておられるのだと気づかれました。

その頃、天皇のお父君であり御室仁和寺を開山された、真言密教の発展に偉大な功績を挙げられた宇多法皇と時の東寺真言長者であった香川県讃岐ご出身の高僧である観賢僧正は空海さまに大師号を賜ることを天皇に強く働きかけておられたのであった。

夢の中でこのお和歌を感得された醍醐天皇さまは、時を移さず、早速大臣に命じて「弘法」と言う大師号と、檜皮色のお袈裟とお衣を下賜(かし)されることとなった。時に延喜21年(921)10月27日、藤原扶閑郷(すけずみ)を下賜「かし」御衣の勅使として、平惟助郷(たいらのこれすけきょう)を諡号(しごう)の勅使として、また御廟「ごびょう」開扉「かいひ」には石山寺の観賢僧正の弟子淳祐「しゅんゆう」等を伴って登山奉仕されました。

奥の院ご廟前の広庭は、勅使随員の一行と高野山全山の職衆で埋もれ~空海奉賛の法要と初めてのお衣替の行事が行われたのでありました。その時、空海さまは御廟より「われ昔、薩捶(さった・仏)に遇(あ)い、親しく悉く印明(いんみょう)を伝う、無比の誓願を発して辺地異域(都や遠い所にまで)に倍す。昼夜に万民をあわれんで普賢の悲願(あらゆる人々を救う誓い)に住し、肉身に三昧を証して慈氏(弥勒菩薩)の下生を待つ」と空海さまからのお誓いの言葉でした。

これ以来~仁和寺宇多法皇のみ心をお継ぎ頂きました嵯峨天皇より諡名「おくりな」法要が毎年10月27日に下賜されました縁日となりました。空海「弘法大師」お大師さまとして信仰の寄り処としてありがたいご宝号「南無大師遍照金剛」となりました・・・・・ お大師さまと仁和寺は深いふかい縁(えにし)の心あたたまるご本山であります。

お大師さまが52歳の時~お大師さまの姉の子、智泉法師が、ご自身の誕生日、すなわち天長2年(825)2月14日、高野山東南院で、わずか37歳の若さで亡くなられた時のことであります。

智泉法師は、9歳の時からお大師さまの弟子となり、誰よりも永くお大師さまに師事され、身辺のお世話もしておられました。生まれつき大変聡明なお方で、若くして十大弟子の一人に数えられ、やがてはお大師さまの後継者ともくされた方でした。わが子の如くに慈しんでおられた智泉法師のことでしただけに、お大師さまのお嘆きは、ひとしおでありました。

お大師さまの言葉の中に~「念(おも)えば亡せる我が法化(仏の子)、金剛の子智泉、影の如く随うて離れず股肱(ここう)(我のそばにいつも一緒)の如く相従う、吾飢うれば汝も飢え、我楽しめば汝も楽しむ、云々~」という葬送のご文からも、お大師さまの一人の人間的なお姿と心の悲嘆を察する事が眼に浮かぶようです・・・・・。

智泉法師の後生を願われ、49日満中陰の法要には、十大弟子の一人欠けた九人の弟子をひきい、お大師さま自ら導師となられ、法要を勤められました。その法要が終わった途端、堂内の灯明がいっせいに輝きを増し、あたりは一瞬、目も眩(くら)むような明るさとなり、その瞬間~白い蓮華台に座した智泉法師のお姿が壇上に現れ、師の僧、お大師さまに深く合掌して感謝のほほえみを残して消え去られました。お大師さまはその姿を見て~「阿字(あじ)の子が 阿字(あじ)の古里(ふるさと) 立ちいでて また立ち帰る 阿字(あじ)の古里(ふるさと)」と~詠ぜられたのでありました。

私たち一人ひとりの命は限りがありますが~その命「肉体」を通して生涯どのような経験が出来るのか~又、人生経験を通して学べる事こそ最高の宝物ではないでしょうか。

その経験こそ浄土に持って行ける素晴らしいお土産ではないでしょうか・・・・・その浄土こそ阿字の古里(ふるさと)であり弥勒の浄土であります。

その教えを伝えて頂いたお祖師さまが、弘法大師であり宇多法皇でありました・・・・今一度自身を振り返り見つめ直す一時を~心静かにご参拝頂きますようお待ち申し上げています。     

  くれぐれもお身体にはご自愛下さい・・・ではまた。      合掌