エンマに舌を抜かれた | 世界遺産 真言宗御室派総本山 仁和寺
今月の法話
今月の法話
26/06/04

エンマに舌を抜かれた

早朝からカエルの合唱が大変にぎやかに聞こえて来ます~ゲロゲロゲロ(アマガエル)・・・ゴォーゴォー(ガマガエル)・・・

声の揃った青春の合唱のようです・・・この光景と声の響きは毎年の風物詩ともいえましょう。仁和寺境内震殿に池があり、睡蓮の葉が浮かび美しい花が顔をのぞかせ~その隙間よりカエルの声が聞こえてきます・・・この声が湧き起こる頃になると、初夏が来たんだなぁ⤴・・・と実感を覚えます。

ところで、このカエルの合唱とセミの声とを合わせて、蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)という言葉がありました。彼らに対しては大変失礼ないい方に当たるかも知れませんが、その言葉の内容は・・・大きな声で下らない議論をしている人間にあてはめたものです。

実は、世の中には~その蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)の人びとが多いのではないでしょうか。外からの声には一切耳をかそうとせず、何が何だかわからないのに、大合唱に酔っているような話しや信仰があります。信仰とはお酒に酔っぱらうようなものではなく~めざめるためのものであります。

カエルの声を聞きながら~フト・・友人からの話しを思い出しました・・・・北海道では、熊が餌を求めて街に出でて来て、時には家畜や人々にも襲いかかることがあります。そこで熊に出くわした時は大声で呼べば、街の人々は木切れや刃物を持って助け合うのは必定です。ある時一人の少年が悪さに「熊が出た・・・クマが出た⤴」と大声で叫んでみると、声を聞きつけた人々は急いで集まって来ました。その少年は人々が慌てて出て来るのが面白くて~その後もこの悪さを続けたようでした・・・・・。

そのうちその少年の声を聞き覚えた人達はだんだん信じなくなり・・・ある日のこと、本当に本物のクマが出て来ました・・・・「あっ~クマが⤴クマが出たぁ~」と彼は大きな声で必死になって叫びつづけたのですが・・・街の人は一人も出てこず、その少年はクマにかみ殺されてしまったという悲しいお話しでした。

私たちは子供の頃、 〽 嘘をつくとエンマさんに舌を抜かれる 〽 という話しをよく聞かされた事を思い出されます。

子供にこの話しをしたら「そんな馬鹿な話し・・・」と言いながら半分は舌を抜かれたら痛いだろうなぁ・・・・と思ったでしょうね。その子たちに一言・・・「言いたいことを他人に喋ることが出来なくなるよ」・・・と話しをしたものです。

私たちの舌とは真実を伝える為にあるのに、嘘ばかりしゃべり語り伝えたので、舌「言葉」本来の用を為さなくなった事が~つまり、エンマさんに舌を抜かれたと言うのであります。

仏の教えを求める者は、平気で嘘をつく妄語「もうご」(うそ)、出まかせを言う綺語「きご」(お世辞)、他人をそしる悪口「わるぐち」、二枚舌を使う両舌「りょうぜつ」を禁じています。

音や声は形には表現出来ないものですが~心地良いものが幸せの理想だと思います。カエルの声も仏の声・嘘の言葉も実は仏の声ですが~そこには「戒め」という~控えなければならない約束があります。それらをすべて受け止める事を、お釈迦さまは・・・「おのれこそ~おのれのよるべ」とおっしゃらました。

その内容を観るに~自分自身をよく調え、自身を最も頼りになる存在にしなさい~というのです。また、弘法大師は「如実知自身」とも諭され~ありのままの自分自身を正しく知る~というのであります。 

大自然の音や声を体感し大暑を乗り越えて下さい~お身体ご自愛の上お過ごし下さい・・・・ ではまた  合掌